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基本的には「陸(領海の基線)から200海里(約370km)」が排他的経済水域(EEZ)として認められています。世界中で他の国と重なり合い、共有(または境界線を巡る交渉や共同管理)している場所はたくさんあります。向かい合っている国や隣り合っている国との距離が740km(370km × 2カ国分)未満の場所では、お互いの「370kmの主張」が必ずぶつかってしまうからです。

このような場合、一般的に以下のようなルールや解決策が取られています。

1. 中間線(等距離線)での境界画定

もっとも一般的な解決策は、両国の岸からちょうど等しい距離にある「中間線(等距離線)」を引いて、海を分け合う方法です。

  • 例:日本と韓国・中国 日本海や東シナ海は、向かい合う国との距離が740kmもないため、お互いのEEZが重なります。そのため、基本的には中間線をベースに境界を決める交渉が行われます。

2. 境界が決まらず「共同管理」にしている場所

お互いに一歩も引けず、境界線を1本の線に決められない場合、争いを避けるために「重なっているエリアを共同で管理しよう」という暫定的な協定を結ぶことがあります。

  • 日韓漁業協定の「暫定水域」: 日本海や東シナ海の一部に、日韓双方の漁船がルールに従って一緒に魚を獲っていいエリア(共同管理水域)が設けられています。
  • 日中漁業協定の「暫定措置水域」: 東シナ海の一部にも、日中で共同管理している海域が存在します。

3. 島国が密集するエリア(ヨーロッパや東南アジアなど)
  • 地中海や北海: ヨーロッパの国々が密集しているため、370kmも伸ばせる余裕はほとんどなく、パズルのように細かく境界線が引かれています。
  • 南シナ海: 中国、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどがそれぞれ島や根拠を主張しており、EEZや領有権の主張が複雑に重なり合っている、世界で最も緊迫したエリアの一つです。

完全に「共有」して1つの海にするのは珍しい

魚を獲る権利や海底の資源(石油など)を開発する権利が絡むため、基本的には「ここからはウチ、ここからはソッチ」と線を引くか、「この四角いエリアの中だけは一緒に使いましょう」というエリア限定の特例(共同管理)にするのが基本です。

EEZ(排他的経済水域)というルールが正式に世界共通の決まり事として確立されたのは、1982年のことです。国連で採択された「国連海洋法条約(UNCLOS)」という、いわば「海の憲法」のような条約によって世界的なルールとして定められました。

EEZ誕生までの流れ
  • 1940年代〜: アメリカのトルーマン大統領が「大陸棚の資源はウチのものだ」と宣言したのを皮切りに、世界中の国々が「自分の国の近くの海や資源は、自分たちで独占したい!」と勝手に主張し始めました。当時は一律のルールがなく、バラバラでした。
  • 1973年〜: 「これでは世界中で海の奪い合い(紛争)が起きてしまう」ということで、国連で大規模な会議(第3次国連海洋法会議)が始まりました。9年近くも激しい議論が続けられました。
  • 1982年: ようやく世界中の国々が納得する形で「国連海洋法条約」がまとまり、その中で「沿岸から200海里(約370km)を排他的経済水域(EEZ)とする」というルールが正式に組み込まれました。

発効

条約が作られたのは1982年ですが、世界中で実際にこのルールがスタート(発効)したのは1994年です。(条約を発効させるには、一定以上の国数が賛成して批准する必要があったため、少し時間がかかりました)。

ちなみに、日本がこの条約を批准して、国内で正式にEEZを運用し始めたのは1996年です。歴史として見ると、比較的新しいルールと言えます。

「ルール」というと、みんなが公平に得をするためのきれいで明確な線引きのように思えますが、実際には「自分にとって都合が良いときはルール(壁)をカチッと決めたいし、都合が悪いときは曖昧(グレー)にしておきたい」という、人間のエゴや立ち位置の縮図がそのまま形になったのがEEZなんです。

海を巡る「壁を作りたい心理」と「曖昧にしたい心理」のせめぎ合いは、まさに人間の縮図そのものです。

1. 「壁」をカチッと作りたい心理(日本の沖ノ鳥島など)

自分にとって圧倒的に有利な場所や、すでに既得権益がある場所では、人間は「ここから先は一歩も入るな」と明確な壁を作りたがります。 日本が「沖ノ鳥島は絶対に島だ!だからここから370kmは日本の壁(EEZ)だ!」と主張するのは、そこに巨大な国益が生まれるからです。ルールを盾にして、他国を締め出すための強固な「壁」を作りたいわけですね。

2. 「境界を曖昧」にしたい心理(東シナ海のガス田など)

逆に、相手の敷地にも潜り込みたいときや、白黒つけると自分が損をするとき、人間はわざと境界線をグレーにしようとします。 例えば、東シナ海で日本が「お互いの真ん中(中間線)で境界を区切ろう」と提案しているのに対し、中国は「いやいや、海底の地形(沖縄トラフ)で見れば、うちの権利はもっと日本側まで伸びているはずだ」と主張して、線を引かせようとしません。 境界線を曖昧にしておけば、そのグレーゾーンにある天然ガスなどの資源を「共同開発」という名目で実質的に切り崩していけるからです。

3. 歴史や感情が「線引き」をさらに難しくする

さらに厄介なのは、ここに「昔からうちの漁師が使っていた」「歴史的にうちの領土だった」という過去の感情が絡んでくることです。 人間関係でも、「ルール上はこうだけど、昔からの付き合いがあるじゃないか」と揉めるのと同じで、国家間でも「1982年のルール」という新しい壁を、何百年も前からある関係性に無理やり当てはめようとするから、あち非ちで摩擦が起きてしまいます。

境界線というのは、引いた瞬間に「内側の人」と「外側の人」を分け、新たな争いを生む性質を持っています。

海のルール(EEZ)を巡るニュースを見るとき、単に「どっちの国が正しいか」ではなく、「いま、どちらの国が壁を作りたがっていて、どちらの国が曖昧にしたがっているのか」という人間の心理の立ち位置(ポジション・トーク)として見てみると、国際政治のドロドロした動きがすごくリアルに、かつ分かりやすく見えてきます。

その中での公海

人間がこれだけ地球上のあらゆる場所に「俺の場所」と線を引きたがる生き物なのに、海のど真ん中にだけは、今でも「誰のモノでもない、みんなの場所」が巨大に残されているというのは、考えてみれば不思議で、どこかロマンすらあります。

なぜ陸地のように、海はすべての場所がどこかの国に分割され尽くさなかったのか。そこには、人類が歴史の中でたどり着いた「賢さ」と「現実的な限界」の絶妙なバランスがあります。

大きく分けると、3つの理由があります。

1. 「壁を作るコスト」が割に合わない(現実的な限界)

陸地なら、国境に柵を立てたり、兵士を立たせて見張ったりして「ここから先は入るな」と管理できます。 しかし、太平洋のど真ん中のような公海は、陸地から何千キロも離れた暴風雨が吹き荒れる文字通りの大洋です。そんな場所に毎日船や飛行機を巡回させて「ここはウチの国だから勝手に入るな!」と監視・管理し続けるのは、莫大なお金と労力がかかりすぎて、どの国にとっても割に合わないのです。

2. 「みんなが自由に移動できる道」を残した方が得だから(ずる賢さ)

もし世界中の海がすべてどこかの国の領土(またはEEZのような制限区域)になってしまったら、船で貿易をするときに大変なことになります。 他国の海を通るたびに「通っていいですか?」「通行料を払え」「中身を見せろ」と言われていたら、世界中の貿易がストップしてしまいます。 そのため、世界の大国たちは「自分の近くの海は確保したいけれど、世界中を自由に移動できる『フリーパスの道(公海)』を残しておいた方が、結果的に自国のビジネスや軍隊の移動に都合が良い」と判断したわけです。

3. 「人類共同の財産」という綺麗ごと(と、技術の限界)

公海の海底には、実はレアメタルなどの莫大な資源が眠っています。EEZを決めた1982年当時、途上国を中心とした国々がこう主張しました。

「おカネや技術がある金持ち国(先進国)だけで、世界の海を全部切り分けて資源を独り占めするのは不公平だ。公海は**『人類共通の財産』**として残すべきだ」

当時はまだ、海の底深くから資源を掘り出す技術がどこの国にもなかったため、「じゃあ、技術ができるまではみんなの場所に職を置いておこう」と、綺麗ごと半分、先送り半分で合意できたという背景もあります。

変化の兆し

人間のエゴは強欲なので、最近では「公海」すらも自分たちのものにしようとする動きが始まっています。 例えば、深海の掘削技術が進歩したことで、公海の海底資源をめぐる新たなルール作り(利権争い)が始まっています。また、地球温暖化で北極の氷が溶けたことで、これまで誰も通れなかった北極海(公海)のルートを誰が支配するか、ロシアやアメリカ、中国などが激しい火花を散らし始めています。

「誰のものでもない場所」がいつまで残るのか。人間の「壁を作りたい欲求」は、今も静かに公海をも侵食しようとしているのが現状です。

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